〜 「いま、ここ」に注意を戻す練習 〜
いま起きていることに、良い悪いの判断を加えずに、気づいている状態。それがマインドフルネスです。
大事なのは、これが「状態」であると同時に「練習で育つ力」だということ。生まれつきの性格ではなく、注意の使い方のトレーニングだと考えてください。
つらさの多くは、目の前の出来事そのものより、頭の中の時間旅行から来ています。
過去に向かえば——「あのとき、ああ言わなければ」が何度も再生される(反すう)。
未来に向かえば——「もし失敗したら」が先回りして押し寄せる(心配)。
どちらも、いまこの瞬間には起きていないことです。マインドフルネスは、そこから注意を「いま」に連れ戻す練習をします。
そしてもうひとつ大事なのが、「考えを、事実ではなく“考え”として見られるようになる」こと(脱中心化)。「私はダメだ」を「“私はダメだ”という考えが浮かんでいる」と眺められると、それに引きずられる力が弱まります。
マインドフルネスは、「考えが止まらない」タイプの苦しさに向いています。一方で、向かない時期もあります。そこも正直にお伝えします。
研究で効果が確かめられている領域です。
先に別の方法から始めたほうがよいことがあります。
目を閉じて自分の内側に注意を向けると、かえってつらい記憶や感覚が出てくることがあります。特に、トラウマや解離のある方に起こりやすいことがわかっています。
そのときは、無理に続けないでください。代わりに、目を開けたまま・外側に注意を向ける方法から始めます。
これらはグラウンディングと呼ばれ、マインドフルネスの入り口としても使えます。
いくつかの入り口があります。どれか1つが続けばそれで十分です。全部やる必要はありません。
いちばん基本の練習です。呼吸を変えようとせず、いま入ってくる空気と出ていく空気に注意を向けます。
気がそれたら、「考えていたな」と気づいて、また呼吸に戻す。これを繰り返します。戻すことが練習の本体なので、何度それてもかまいません。まずは3分から。
足の先から順に、体の各部分に注意を移していきます。感じることを変えようとせず、いまある感じをそのまま確かめます。
体は「いま」にしか存在しないので、注意を現在に引き戻す力が強い方法です。ただし、体の感覚がつらい方には向きません。そのときは飛ばしてください。
座らなくてもできます。歩く一歩ごとの足の裏の感じ、ひと口目の味とにおいに注意を向けるだけで、同じ練習になります。
じっとしているのがつらい方、時間が取れない方には、こちらのほうが続きます。
忙しい日常の中で使える短い型です。①いま何を考え、何を感じているかに気づく → ②呼吸に注意を集める → ③体全体に注意を広げる。各1分ずつ。
うつの再発予防のプログラム(MBCT)でも、いちばんよく使われる道具とされています。落ちかけたときの「非常ブレーキ」として持っておけます。
短くても、毎日のほうが効きます。週に1回30分より、毎日3分です。
続けるコツは、すでにある習慣にくっつけること。歯みがきのあと、電車に乗ったら、布団に入ったら。「時間ができたらやろう」は、まず続きません。
いちばんはっきりしているのは、うつ病の再発予防です。
マインドフルネス認知療法(MBCT)は、うつを3回以上くり返している方の再発率を下げることが複数の研究で示されています。2015年に発表された研究では、抗うつ薬を飲み続けた場合と比べて、再発予防の効果に差がなかったと報告されました。イギリスのNICEガイドラインでも、再発予防の選択肢として推奨されています。
このほか、不安、ストレス、慢性の痛みに対しても、中等度の効果が報告されています。
マインドフルネスは、いま強くつらい症状を、その場で消す方法ではありません。急性期には、他の治療のほうが向いています。
力を発揮するのは、落ち着いてきた時期に、また落ちていくのを防ぐ場面です。「落ちはじめのサインに、早く気づけるようになる」——これが再発予防につながると考えられています。
このアプリで実際に試せるマインドフルネス関連のツールです。