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動機づけ面接

〜 「変わりたい気持ち」を見つけて育てる 〜

動機づけ面接ってなに?

💡 一言でいうと

説得しない。指示しない。それでも、変わるほうへ進んでいく。——そういう話し方の技術です。

アルコール依存の治療から生まれ、いまでは薬物・ギャンブル・ゲーム、禁煙、生活習慣、服薬、受診をためらっている方への関わりまで、幅広く使われています。

🌻 「変わりたい」と「変わりたくない」は、同時にある

お酒をやめたい。でも、やめたくない。
働きたい。でも、こわい。
薬を飲んだほうがいいのはわかっている。でも、飲みたくない。

この「どちらの気持ちも本当にある」状態を、両価性(アンビバレンス)と呼びます。

大事なのは、これは異常でも、意志が弱いのでもなく、変化の前に必ず通る自然な状態だということです。両価性がある人は「やる気がない人」ではありません。すでに半分は、変わろうとしている人です。

🚫 なぜ説得すると、逆効果になるのか

両価性のある人に「やめたほうがいいですよ」と説得すると、何が起きるでしょうか。

その人は、反対側の気持ちを言葉にします。「でも、それしか楽しみがなくて」「でも、やめたら眠れないんです」。——説得されるほど、本人が「変わらない理由」を口に出すことになるのです。

そして、人は自分が口に出したことを信じるようになります。だから説得は、変わらない方向へ本人を固めてしまいます。

動機づけ面接は、この向きを逆にします。「変わりたい理由」のほうを、本人の口から出してもらうのです。

こんなときに向いています

動機づけ面接は、「変わったほうがいいのはわかっている。でも動けない」という場面に向いています。

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こんなテーマに

依存の領域から広がってきました。

  • アルコール・薬物
  • ギャンブル・ゲーム
  • 禁煙
  • 食事や運動などの生活習慣
  • お薬を飲むかどうか迷っている
  • 受診や休職をためらっている
👨‍👩‍👧

こんな立場でも使えます

医療者だけの技術ではありません。

  • ご家族が本人に関わるとき
  • 職場の上司や産業保健の立場
  • 支援者・相談員
  • 摂食障害で治療に踏み切れないとき
  • 10代の本人と話すとき
🌿 「甘やかし」とは違います

説得しない=放っておく、ではありません。動機づけ面接は、はっきり方向を持った関わりです。

やめたほうがいいと考えていることは伝えます。心配していることも伝えます。ただし、押しつけずに、選ぶのは本人だという前提を崩さない。そして、本人の中にある「変わりたい」を丁寧に拾い、そこを大きくしていきます。

実際に何をするの?

基本の道具が4つ(OARS)、進み方が4段階あります。診察の場だけでなく、ご家族との会話でも使えます。

① 開かれた質問をする

「はい/いいえ」で終わらない聞き方をします。

「お酒、減らせそうですか?」(閉じた質問)ではなく、「お酒について、いまどんなふうに感じていますか?」(開かれた質問)。

前者は答えが2つしかありませんが、後者は本人が自分の言葉で考えることになります。ここから会話が始まります。

② 是認する — できていることを言葉にする

「今日ここに来られたこと自体、簡単ではなかったと思います」
「先週は2日、飲まない日があったんですね」

お世辞ではなく、事実として認められることを、そのまま言葉にします。責められると身構えますが、認められると、人は自分から話しはじめます。

③ 聞き返す(リフレクション)

動機づけ面接の中心技法です。相手の言ったことを、少し形を変えて返します。

「やめたいけど、やめられないんです」
「やめたい気持ちは、はっきりあるんですね」

ここで「やめられない」ではなく「やめたい」のほうを拾って返すのがポイントです。返された側は、その気持ちをもう一度たしかめ、続きを話し出します。

④ 要約する

ここまでの話をまとめて返します。このとき、「変わりたい」側の発言を集めてまとめるのがコツです。

「体のことが心配で、娘さんにも言われていて、朝つらいのもわかっている。でも夜の時間の過ごし方が思いつかない、ということですね」——自分の言葉が並べて返されると、本人の中で像がはっきりします。

⑤ 4つの段階で進む

会話全体は、①関わる(信頼をつくる)→ ②焦点を定める(何について話すか決める)→ ③引き出す(変わりたい理由を本人から)→ ④計画する(具体的にどうするか)という順で進みます。

大事なのは、③が育つ前に④へ行かないこと。「じゃあこうしましょう」を早く出しすぎると、そこで会話が止まります。多くの失敗は、この順番の飛ばしから起きます。

👨‍👩‍👧 ご家族が、今日から使えること

ご家族の関わりで、いちばん効果が変わるのはここです。

言ってみたいこと

  • 「お酒について、どう思ってる?」
  • 「やめたい気持ちもあるんだね」
  • 「昨日は飲まなかったんだね」
  • 「私は心配してる。決めるのはあなただけど」

効きにくい言い方

  • 「いいかげんにやめなさい」
  • 「何回言えばわかるの」
  • 「あなたのためを思って言ってるのに」
  • 「みんな迷惑してる」

右側が間違っているのではありません。当然の気持ちです。ただ、両価性のある相手に対しては、反対側の気持ちを強めてしまう——それだけのことです。

効果は確かめられているの?

🔬 研究でわかっていること

動機づけ面接は、依存の領域を中心に、多くの研究で効果が確かめられています。

特徴的なのは、短時間でも効果が出ることです。1〜2回の面接でも、飲酒量の減少などの変化が報告されています。また、他の治療への導入がうまくいく——治療を続ける人が増える、という効果も繰り返し示されています。

さらに、面接の中で本人が「変わりたい」側の発言(チェンジトーク)をどれだけ口にしたかが、その後の実際の行動変化を予測する、という研究があります。「本人が口に出すほど変わる」という前提には、裏づけがあります。

💡 説得したくなったときが、分かれ目

相手が「でも」と言い出したときは、こちらが押しすぎているサインです。

そこで押し返すのではなく、いったん引いて、相手の言い分をそのまま聞き返す。すると不思議なことに、相手のほうから「まあ、体には悪いんですけどね」と言い出すことがあります。押されなくなると、人は自分でバランスを取り戻すのです。

よくあるご質問

Q. 説得しないで、本当に変わるのですか?
A. 説得しないから変わる、というのが動機づけ面接の考え方です。
人には「自分のことは自分で決めたい」という強い性質があります。外から押されると、たとえ正しいことでも反発が起きます。「変わる理由」を自分の口から言ったときにだけ、その理由は本人のものになります。
Q. 本人にまったくやる気がないときは?
A. 「やる気がない」ように見えるとき、実際には両価性のうち「変わりたくない」側だけが表に出ていることがほとんどです。反対側は、まだ言葉になっていないだけです。
その段階でやることは、説得ではなく「関わる」こと——まず話せる関係をつくることです。急いで計画を立てようとすると、かえって遠のきます。
Q. 家族が使ってもいいのですか?
A. はい。むしろご家族が使えると、いちばん影響が大きい関わり方です。毎日顔を合わせるのはご家族だからです。
ただし、ご家族が我慢し続ける必要はありません。心配していること、つらいことは伝えていいのです。伝え方を「あなたが悪い」ではなく「私は心配している」に変えるだけで、届き方が変わります。
Q. これは何回くらいの面接で行うものですか?
A. 決まった回数はありません。1回の診察の中で使うこともあれば、数か月かけて関わることもあります。
当院では、依存に関わるテーマだけでなく、治療を続けるか迷っているとき、休職や復職を決めかねているときにも、この考え方で一緒に整理していきます。

あわせて使えるワーク・ページ

「変わりたい/変わりたくない」を自分で整理してみるワークと、関連する解説です。

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📚 参考資料