夢に合わせて、体が動いてしまう。
しくみを知って、安全な眠りを整えましょう
夜中に突然大声で叫ぶ、手足を振り回す、ベッドから落ちてしまう——そんな様子を目にして、心配になってこのページを開いたご家族も、「自分は何をしているのだろう」と不安になっているご本人もいらっしゃると思います。
まずお伝えしたいのは、この動きは、ご本人が意識してやっているものではないということです。眠っている間の脳のしくみによって起きているもので、性格や暴力性の問題ではありません。
このページでは、このような状態のひとつであるレム睡眠行動障害(RBD)について、しくみ・似ている状態との違い・検査・けがを防ぐ工夫・治療をまとめました。似た様子を示す状態はほかにもあり、最終的な診断は医師が診察や検査をもとに行います。気になることは、このページだけで判断せずに相談してください。
眠りには、深くしずかな眠りと、夢を見やすい眠り(レム睡眠)があり、ひと晩のうちに何度も入れかわっています。
レム睡眠のあいだ、脳は活発に働いて夢を見ています。けれども、ふつうは体の筋肉が脱力して動かないしくみが働いているので、夢の中で走ったり戦ったりしても、実際の体は静かに横になったままです。
筋肉がゆるんでいるので、夢の中の動きは体に伝わりません。
「動かないしくみ」がうまく働かず、夢の内容どおりに声が出たり手足が動いたりします。
夢の中で身を守ろうとしている動きなので、隣にいる大切な人を傷つけようとしているわけではありません。
一緒に暮らしている方が、次のような様子に気づくことがよくあります。ご本人は覚えていないことも少なくありません。
会話をしているような寝言、怒鳴る、助けを求めるように叫ぶ。
布団の中で腕を振り回す、足で蹴る。何かから身を守るような動き。
夢の中で逃げたり飛びかかったりして、ベッドから転げ落ちてしまう。
壁や家具にぶつかってあざができる。隣で寝ている人に手や足が当たってしまう。
目が覚めると比較的すぐに状況がわかり、「怖い夢を見ていた」と話せる。
夜中に声を出したり体が動いたりする状態は、ほかにもあります。見分けるための目安をまとめました。色のついた行が、このページのレム睡眠行動障害です。
表は横にスクロールできます →
| 状態 | 起こりやすい人・時間 | ご本人の記憶 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| レム睡眠行動障害 | 中高年以降に多い。夜の後半から明け方 | 起こされると夢の内容を話せることが多い | 夢の内容に合わせて、叫ぶ・殴る・蹴るなどの動きが出る |
| 夜驚症・夢遊病 | 子どもや若い人に多い。夜の前半 | 覚えていないことが多い | 深い眠り(ノンレム睡眠)から中途半端に目覚めて起こる。おびえて叫ぶ、歩き回るなど |
| 睡眠時無呼吸 | いびきが大きい方。夜のどの時間でも | 覚えていないことが多い | 息が止まったあと、呼吸が戻るときに体が大きく動いたり、声が出たりすることがある |
| 悪夢 | 年齢を問わない | 怖い夢をはっきり覚えている | 怖い夢で目が覚めるが、体は動かない |
| 夜間のせん妄 | 高齢の方、体調をくずしているとき、入院中など | あいまいなことが多い | 眠っているのではなく、起きていて混乱している状態。つじつまの合わない言動、落ち着かなさ |
| てんかん発作 | 年齢を問わない | 覚えていないことが多い | 毎回よく似た動きをくり返すことがある。手足のけいれん、口をもぐもぐさせるなど |
表はあくまで目安で、いくつかが重なっていることもあります。見分けるには専門的な検査が必要なこともあるので、ご家庭で決めつけずに相談してください。夜中の様子をスマホで撮った動画は、診断のとても大きな助けになります。撮り方のコツはご家族への項目にまとめています。
一部の抗うつ薬などのお薬によって、この症状が起きたり、強まったりすることがあります。また、多量の飲酒や、飲み続けていたお酒を急にやめたときにも起こることがあります。
心あたりのあるお薬があっても、自己判断でやめないでください。急にやめると、かえって体調をくずすことがあります。飲んでいるお薬は、お薬手帳ごと主治医に見せて相談しましょう。
お薬などのはっきりした原因が見あたらないレム睡眠行動障害は、長い年月のうちに、パーキンソン病やレビー小体型認知症といった病気の早いサインであることが少なくないとわかってきました。これらは、脳にαシヌクレインという同じ種類のたんぱく質がたまる病気です。
こう聞くと、怖くなってしまうかもしれません。けれども、あわせて知っておいてほしいことがあります。
この症状に気づいて相談につながったことには、大きな意味があります。定期的に経過をみていくことで、ほかの変化が出てきても早く見つけ、早く手を打つことができます。体を動かす習慣を続ける、よく眠る、人とのつながりを保つ——今日からの暮らしも、大切な備えになります。
不安な気持ちになるのは自然なことです。ひとりで抱えこまずに、心配なことはそのまま診察で話してください。
経過をみていくうえで、次のような変化に気づいたら、次の診察で伝えてください。
料理のにおいや焦げたにおいに気づきにくくなった。
なかなか治らない便秘が続いている。
立ち上がったときにふらつく、目の前が暗くなる。自律神経のしくみ
ボタンがとめにくい、字が小さくなった、じっとしているときに手がふるえる。
約束を忘れる、段取りがうまくいかないことが増えた。
気持ちが沈む、何をしても楽しめない、不安が強い。
いつごろから、どんな動きが、夜のどのあたりで起きているか。ご本人は覚えていないことも多いので、一緒に寝ているご家族のお話がとても大事です。
スマホで撮った動画があると、どんな動きなのかを医師が直接確かめられます。
医療機関に一晩泊まり、眠っている間の脳波・筋肉の動き・呼吸などを記録します。レム睡眠中に筋肉が脱力していないことを確かめるための、診断にいちばん大切な検査です。睡眠時無呼吸など、似ている状態との区別にも役立ちます。痛みのある検査ではありません。
においの検査、手足の動きや反射をみる神経の診察、もの忘れの検査、頭の画像検査(MRI など)を行うことがあります。
レム睡眠行動障害では、ご本人がベッドから落ちたり家具にぶつかったりして、また、隣で寝ている方に手足が当たって、思わぬけがをすることがあります。お薬を使うかどうかにかかわらず、まず寝室の安全を整えてください。今夜からできることばかりです。
チェックした内容は、この端末の中だけに保存されます。ほかの人に送られることはありません。
上の寝室づくりが、治療の土台です。お薬を使う場合も、安全対策は続けてください。
動きが激しい、けがの心配がある、といった場合には、お薬で症状をやわらげることがあります。よく使われるお薬のひとつにクロナゼパムがあります。
飲んでいるお薬が症状に関係していそうな場合は、主治医とお薬の調整を検討します。もとの病気の治療とのバランスを考えて決めるので、自己判断でやめずに相談してください。
ご本人は、夜中のことを覚えていないことも多く、翌朝に聞かされて驚き、申し訳なく感じていることもあります。夢の中で誰かを守ろうとしていた、ということも少なくありません。
叩かれて痛かった、夜中に叫び声で起こされて怖かった、眠れない日が続いている——そう感じるのは当然のことです。ご家族の睡眠と安全も、同じくらい大切にしてください。つらさは、診察で遠慮なく話してください。
どんな動きや声だったか、夜の何時ごろだったか、どのくらいの頻度か、けがはあったか。簡単なメモでもとても役に立ちます。睡眠日誌に書きとめておくのもおすすめです。
迷ったときは、ためらわずに119番に連絡してください。
寝ている間の大きな動きは、わざとではありません。
夢に合わせて体が動いてしまう、眠りのしくみの問題です。
いちばん大切なのは、今夜からの寝室の安全。
お薬は、自己判断でやめずに主治医と相談を。
早く気づけたことは、備える時間ができたということ。
ご本人とご家族と一緒に、経過を見守っていきましょう。