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復職プログラムガイド

焦らず、あなたのペースで

復職って何だろう?

💡 復職(リワーク)とは

うつ病や適応障害などで休職した方が、職場に戻るまでのプロセス全体のことです。「元の仕事に戻ること」だけでなく、再発しないための準備も含みます。

🤗 大切なメッセージ

「早く戻らなきゃ」と焦らなくて大丈夫です。

段階的に進めることが再発予防につながります。急いで復職して再び休職するよりも、しっかり準備してから戻る方が、結果的に早く安定した生活を取り戻せます。

あなたのペースで大丈夫です。

復職までの5つのステップ

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に基づいた5段階モデルです。

1

休業の開始・休業中のケア

しっかり休むことが最初の「仕事」です。主治医の診断書に基づいて休職し、治療に専念します。この時期は「何もしていない」ことに罪悪感を感じがちですが、脳の回復には十分な休養が必要です。傷病手当金の手続きも早めに行いましょう。

2

主治医による復職可能の判断

近年、復職の判断基準はより厳しくなっています。日常生活ができるだけでは不十分で、仕事と同等の活動量を安定して維持できることが求められます。

具体的な目安:

・ 通勤時間帯に起床し、日中8時間程度の活動ができる
・ 通勤ルートを毎日往復できる体力がある
・ 図書館やカフェで2〜3時間の集中作業ができる
・ これらを2週間以上安定して継続できている
・ 週末に過度に疲れて寝込まない

「日常生活ができる」と「仕事ができる」の間には大きな差があります。この差を埋めるのがリワーク準備期間です。

3

復帰支援プランの作成

産業医面談を経て、具体的な復帰プランを作ります。勤務時間、業務内容、フォロー体制などを決めます。あなたの意向を伝えることが大切です。「まだ不安なこと」「配慮してほしいこと」は遠慮なく伝えましょう。

4

復職の決定・試し出勤

試し出勤(リハビリ出勤)制度がある場合は活用しましょう。短時間勤務から始めて、段階的に時間を増やしていきます。通勤の練習だけでも大きな一歩です。

5

復帰後のフォローアップ

復職後3〜6ヶ月は「回復期」と考えましょう。定期的な面談や振り返りを続け、無理のないペースで仕事量を戻していきます。この時期の再発予防が最も重要です。

なぜ、休むだけでは戻れないのか

🦴 症状が治ることと、働ける状態は、別のものです

骨折でギプスが外れても、その日から走れないのと同じです。骨がついたこと(症状の回復)と、走れること(働ける状態)は別で、間にリハビリが要ります。こころの不調も同じで、気分が落ち着いたことと、毎日決まった時間に働き続けられることの間には、距離があります。

📉 休んでいる間に、静かに落ちていくもの

休養は症状を回復させるために必要です。ただし休んでいる間、使わない機能はゆっくり落ちていきます。

  • 体力 — 通勤の往復だけでも、思ったより消耗します
  • 睡眠と覚醒のリズム — 起きる時刻が自由になると、朝型に戻すのに時間がかかります
  • 集中の持続力 — 短い動画は見られても、2時間の作業は別の力です(「あたまがボーっとする」の正体
  • 人と関わる負荷への耐性 — 家族以外と話す機会が減ると、会話そのものが疲れるようになります

これらは休養では戻らず、少しずつ使うことで戻ります。それが復職訓練です。

⏳ 準備なしで戻ると、何が起きるか

復職直後は、気力と緊張感で2週間ほどは走れてしまうことが多いです。問題はそのあとで、張りつめていたものが切れたときに、一気に消耗が出ます。復職してまもなく再び休むことになる方は、少なくありません。

訓練は、あなたを職場から遠ざけるための足止めではありません。戻ったあとに「働き続けられる」ようにするための準備です。

💬 「もう大丈夫なのに、なぜまだ休むのか」と感じたら

その感覚は間違っていません。実際、症状はよくなっているのだと思います。ただ、調子がよいと感じる今こそ、訓練を始めるのにいちばんよい時期です。まだ休職期間があるうちに練習しておくと、戻ってからが楽になります。焦る気持ちは、練習の燃料に使いましょう。

段階別トレーニング① からだを戻す

ステップ2の「復職できる状態」は、休んでいるだけでは届きません。「日常生活ができる」と「仕事ができる」の間には差があり、その差は練習で埋めます。

下の4段階は、その練習メニューです。いま自分がいる段階を開いて、今週やることを1つ決めるだけで十分です。

🌱 先に、いちばん大事なこと

進めない週があっても大丈夫です。体調が落ちたら、ひとつ前の段階に戻ってください。戻ることは失敗ではなく、再発を防ぐいちばん確実な方法です。焦って段階を飛ばすと、復職後に息切れしやすくなります。

第1段階 生活リズムを戻す

ねらい: 朝、決まった時間に起きられる体に戻す

  • 起床時刻を固定する(出勤日と同じ時刻。眠れなくても布団から出る)
  • 3食とる(食欲がなければ量は少なくてよい)
  • 日中に30分の散歩(近所で可。日光を浴びる)
  • 昼寝は15〜30分まで、15時までに
次に進む目安: 平日5日、起床時刻が安定した状態が2週間続いた
第2段階 外出と体力をつける

ねらい: 家の外で数時間過ごせるようにする

  • 図書館・カフェで1〜2時間過ごす(読書・スマホでも可)
  • 週3〜4回、外出する
  • 買い物や用事を自分で済ませる
  • できれば午前中に家を出る
次に進む目安: 週4回の外出が2週間続き、翌日に寝込まない
第3段階 模擬通勤と作業

ねらい: 通勤の負荷と、頭を使う作業に慣らす

  • 通勤時間帯に、実際のルートを往復する(会社に入る必要はありません。最寄り駅まででも可)
  • そのあと図書館などで2〜3時間の作業(読書・PC・資格の勉強など)
  • 週4〜5回のペースにする
  • 下の「模擬通勤・作業の記録」に残す
次に進む目安: 週4〜5回を2週間続けられ、週末に寝込まない
第4段階 実戦リハーサル

ねらい: 勤務と同じ量を、安定して続けられるか確かめる

  • 週5日、日中8時間相当の活動を続ける
  • 試し出勤(リハビリ出勤)の制度があれば活用する
  • 復職後の生活を想定して、家事や睡眠のペースも整える
  • 下の「面談で伝えることの準備」を書いておく
次に進む目安: 2週間安定 → 主治医・産業医と復職の時期を相談する

段階別トレーニング② 気持ちを戻す

😮‍💨 「仕事のことを考えないでいると、楽」

休職して、仕事のことを頭から外せたとき、ふっと楽になった——そう感じた方は多いと思います。それは自然なことで、責任感の強い人ほど、そうなります。まずは、そう感じた自分を責めないでください。

ただ、この「楽」には少し注意が要ります。考えないから楽なのであって、仕事への不安が減ったわけではないことが多いからです。触れずにいる間、不安はそのままの大きさで置かれています。

🌊 触れると苦しくなるのは、「悪化」ではありません

復職準備で仕事のことを考え始めると、動悸がしたり、気分が落ちたり、眠れなくなったりすることがあります。多くの方はここで「やっぱりまだ治っていない」と受け取って、準備をやめてしまいます。

でもそれは再発ではなく、避けていたものに触れたから出た反応であることがほとんどです。反応はふつう数十分から数時間で下がりますし、回数を重ねるほど小さくなっていきます。

逆に、避け続けたまま復職日を迎えると、前日から当日にかけて、不安が一度に押し寄せます。小分けにして先に済ませておくほうが、ずっと楽です。

⚠️ その前に、ひとつだけ確かめてほしいこと

「仕事のことを考えると苦しい」には、まったく違う2つがあります。

  • 避けているから苦しい — 仕事内容そのものは嫌ではないが、離れている間に近づきにくくなった。→ この場合は、下の練習が効きます
  • 職場のほうに問題がある — ハラスメント、明らかな過重労働、安全が保たれない環境が続いている。→ この場合、慣らす練習はしないでください。必要なのは慣れることではなく、環境を変えること(配置転換・部署異動・転職)です

見分けがつかないときは、それ自体を診察で話してください。戻る先が安全かどうかは、練習を始める前に決めることです。

下の4段階は、からだの訓練と並行して進めます。からだが第2段階なら気持ちも第2段階、と揃える必要はありません。気持ちのほうがゆっくりでかまいません。

気持ち① 1日5分だけ、仕事のことを考える

ねらい: 「考えたら止まらなくなる」わけではないと確かめる

  • 時間を決めて(例: 夕方に5分)、復職後の一日を思い浮かべる
  • 5分たったら、意識的にやめて別のことをする
  • そのあと、気持ちがどのくらいで落ち着いたかを見ておく
  • 職場のある方向へ、散歩がてら出かけてみるのも同じ効果があります
次に進む目安: 5分考えても、その日のうちに気持ちが戻る
気持ち② 仕事に関わるものを、10分だけ開く

ねらい: 実物に触れる。頭の中の想像より、たいてい穏やかです

  • 社内メールや業務資料を10分だけ開いてみる(返信はしなくてよい)
  • 業務で使っていたソフトを立ち上げてみる
  • つらくなったら途中でやめてよい。やめられたこと自体が練習になります
次に進む目安: 週に2〜3回、10分開けるようになった
気持ち③ 職場の人と、短い連絡を1回

ねらい: いちばん気が重いところを、小さく済ませておく

  • 上司や人事に近況を1通(「ご連絡ありがとうございます。少しずつ体調が整ってきています」程度で十分)
  • 長く書かない。近況と、次の連絡時期だけでよい
  • 返事が来るまでの時間がつらければ、送る時間を朝にする
次に進む目安: 送ったあと、その日のうちに気持ちが戻る
気持ち④ 一度、職場に行ってみる

ねらい: 復職初日を「はじめての日」にしない

  • 面談などの機会に、実際に職場の建物まで行く
  • 入らずに、外まででもかまいません
  • 行った日は、それだけで終わりにして休む
次に進む目安: 職場に行った翌日、寝込まずに過ごせる
🌱 うまく進まないときは

①がどうしても始められない、考えると何日も落ち込みが続く——そんなときは、練習が足りないのではなくまだ症状が残っている可能性があります。その場合は訓練より治療が先です。無理に進めず、診察で伝えてください。

復職準備セルフチェック

今の状態を確認してみましょう。すべてにチェックが入る必要はありません。主治医との相談材料としてお使いください。

🌤️ 症状の安定(いちばんの土台です)

🛏️ 生活リズム

🚃 体力・通勤

📖 集中力・作業

💬 対人関係

0 / 21 項目

焦らなくて大丈夫。少しずつ増えていけばOKです 🌱

毎日の生活リズム記録

復職準備で最も大切なのは生活リズムの安定化です。1週間の記録をつけてみましょう。

📊 1週間の生活リズム
起床
就寝
外出
活動h
気分

模擬通勤・作業の記録

第3段階からの記録です。「やった」という事実が積み上がると、復職の判断材料になります。産業医や上司との面談で示す資料にもなります。

疲れが毎回4〜5なら、まだ負荷が高いサインです。ひとつ前の段階に戻してみてください。

面談で伝えることの準備

産業医・上司との面談は、あなたの希望を伝える場です。その場で考えると言いそびれるので、先に書いておきましょう。書いた内容から、読み上げられる文章を作ります。

復職した後の再発予防プラン

復職してからの3〜6か月は回復期です。ここで無理をすると、また休むことになりやすい時期でもあります。

調子が下がるサインは人によって違います。元気なうちに、自分のサインと対処を決めておくのがいちばん効きます。

💡 戻ってすぐの時期に、決めておくとよいこと
  • 「がんばりすぎのライン」を先に決める(例: 残業は月◯時間まで)
  • 週に1日は、予定を入れない日をつくる
  • 「元に戻す」ではなく「新しいペースをつくる」と考える

知っておきたい制度

💰 傷病手当金

健康保険に加入していれば、休職中も給与の約2/3が最長1年6ヶ月支給されます。申請は会社の人事部門や健康保険組合に確認してください。

🏥 自立支援医療

精神科の医療費の自己負担が3割→1割に軽減されます。通院が長期になる場合は大きな支えになります。市区町村の窓口で申請できます。

🏢 障害者職業センターのリワーク

各都道府県の障害者職業センターでは、無料のリワークプログラム(12〜16週)を提供しています。生活リズムの立て直し、グループワーク、職場との調整支援などが受けられます。

🏥 医療機関のリワークデイケア

医療機関で行うリワークプログラムは健康保険が適用されます。認知行動療法や対人関係トレーニングなど、専門的なプログラムが受けられます。主治医にご相談ください。

👨‍⚕️ 産業医面談

復職時には産業医面談が行われます。会社負担で受けられます。あなたの状態を伝え、復帰プランを一緒に作る大切な機会です。

ご家族へ

「見守る」と「放置する」は違います

適度な距離感で、本人のペースを尊重しながら見守ることが大切です。「まだ復職しないの?」「いつまで休んでるの?」という言葉は、本人をさらに追い詰めてしまいます。

具体的な声かけ

✅ こんな声かけを
「最近、よく眠れてる?」
「散歩に出られたんだね」
「何か手伝えることある?」
❌ 避けたい声かけ
「いつ復職するの?」
「もうそろそろ大丈夫でしょ」
「甘えてるんじゃない?」

ご家族自身のケアも大切です

回復のペースは本人にしかわかりません。ご家族が疲れてしまうと、支える力も弱まります。ご家族向けの相談窓口や家族会も活用してください。

📋 休職のてびき

休職に入るときの手続き・傷病手当金・過ごし方のガイドはこちら。

休職のてびきを見る →

💚 最後に

復職は「ゴール」ではなく「新しいスタート」です。戻った後も、自分のペースを大切にしながら、ストレスとの付き合い方を少しずつ身につけていきましょう。あなたは一人ではありません。

🧭 あわせて読みたい:「なんとかなる」と思える力(SOC)
復職の見通しを立てる(わかる感)、頼れる人と制度を数える(できる感)、やり直したい暮らしを確かめる(意味がある感)——復職準備にSOCの視点を。
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